【第2回】千田さんは、どうしてビジネス書の世界でやっていけると思ったのですか?


◆自分の好きなことだし、勝ちやすそうだと思った◆

中井ゆり(以下、中井):さて、今回はいよいよ千田さんが没頭しておられる執筆の世界のお話しをお聞きしたいと思います。実はこの質問はかなり前から私の中で温めていたもので、どうしても聞きたかったことです。

千田本を読んでいると千田さんは大学時代に「本を書いて生きていく!」と決めたと書いてありますが、それができると思った根拠を知りたいです!


千田琢哉(以下、千田)自分の好きなことだし、勝ちやすそうだと思ったんだよ。


中井:大学時代に1万冊も読書するほどの無類の本好きだったことは知っていましたが、自分が著者になり、しかも勝ちやすそうだと思えたということですか?

普通の人はいくら本好きでも読者から著者になれるとは思わないですし、もし奇跡的に著者になれたとしても、まさか作家の世界で本当に勝てる、勝ち続けるなんて到底思えないような気がするのですが....


千田:その点については俺は自分のことをかなり客観視できるほうだと思う。


中井:とおっしゃいますと?


千田:えーとね、俺って自分のことを過大評価することもなければ過小評価することもなくて、特に仕事や人生においてはかなり冷徹なんだよね。人によっては“冷徹”じゃなくて“冷酷”と感じる人もいるかもしれない。まぁ、どっちでもいいんだけどさ(笑)


中井:それは私も感じたことがあります。

これは千田さんの才能だと思うのですが、ご自身のことをまるで他人事のように話しますよね。いい話も悪い話も。それって誰にでもできることじゃないですよ。さすが経営コンサルタントとして活躍されただけあるなって思いますね。

私なんて自分の過大評価と他人の過小評価の塊ですから(笑)…ところでどんな風にご自身のことを客観視されていたのでしょう。具体的に教えていただけますか?


千田:その前に言っておかなければならないことがあって、実は俺が大学時代に1万冊の本を読んだ中で一番多かったのは小説なんだよ。


中井:えー!?てっきり今の千田本と同じようなビジネス書が中心だと思っていました!

でも確かに他のビジネス書と違い、小説や映画の世界の具体例が頻繁に出てくるとは感じていましたけど。


千田:数にしたらビジネス書も結構読んだけど、率としては全体の1割にも満たなかったんじゃないかな。


中井:どうして小説家になろうとしなかったんですか?


千田:とても勝てそうになかったからだよ。


中井:えー!?そうなんですか?


千田:うん。小説の世界は特殊な才能がなければやっていけないと思った。次元が違う。

小説というのは現実ではなく創造。芸術と同じで天才しか生き残れない世界。受験勉強や資格試験のように凡人がコツコツと努力して勝てるような甘い世界じゃない。

「天才とは1%の才能と99%の努力である」という言葉もあるけど、99.99%の人はその“1%の才能”すらないんだよ本当に綺麗さっぱり見事に“ゼロ”なんだ。

ひょっとしたら俺も将来小説を書くことになるかもしれない。だけど少なくとも今はその時じゃないとあっさりと負けを認めて諦めた。それに比べてビジネス書の世界は「これはイケる!」と直感したんだ。



◆ビジネス書の世界は「カスばっかやな」と思った◆

中井:ビジネス書の世界で「イケる!」と直感したのはなぜでしょうか?


千田:オブラートに包んだ表現をすると、「自分にとって偏差値が低い世界だ」と思ったから。


中井:オブラートに包まない表現にすると?


千田:競技参加者の大半が「カスばっかやな」と思った(笑)

今は経験がなくて何も書けないけど、本気で10年間サラリーマンをやればこの世界なら確実に俺は世に出ることができると。

どれだけ謙虚に分析しても自分が勝てない理由が見つからなかったんだ。おっとこれは俺が若かりし大学生の頃の話、ね。



中井:そっちのほうが千田さんらしくて私は好きです(笑)


千田:俺から見て「この人は天才」と感じられる人がビジネス書の世界には本当に数えるほどしかいなかった。

どんなにしくじっても、そのトップ集団で走っている下限には食い込めると。


中井:でも千田さんから見て天才と感じる人がいたんですね?

具体的に教えてもらってもいいですか?


千田:何人かいたけれど、その中の一例として当時就活のカリスマと呼ばれていた人が二人いた。

一人は早稲田大学から大手広告代理店に行って独立した人で、もう一人は慶應大学から総合商社に行って独立した人。

当時の俺には二人とも雲の上の存在。この世界は東大でも逆に不利になるくらい。東大だと「どうせ東大だし…」「東大だから特別でしょ?」とまるでどこか遠くのお伽噺として片づけられてしまうからね。

早慶だと実際に手が届くかどうかは別として、手が届きそうだと大衆を勘違いさせてくれるから、憧れを持ちつつも現実として話を聞いてもらえる。つまり、売れるというわけ。

小説と違ってビジネス書は一にも二にもプロフィールが命だから、“バカ”をウリにした奇抜な四流でも一発屋なら狙えるけど売れ続けるのは難しい。“何を”言うかではなく、“誰が”言うかがスタートラインではとても大切。同じ羊羹でもスーパーの包装紙ではダメで、高級デパートの包装紙じゃないと門前払い。

“売れる”という点において、当時のビジネス書著者の経歴で早慶から広告代理店・総合商社というコースでカリスマの地位を築いているのは、昔の野球の世界だと王と長嶋がすでに絶対の地位を築いていたみたいな感じかな。


中井:た、確かにそれを想像すると普通は戦意喪失しちゃいますね。


千田:最初はこの二人の間に入り込む余地はないように思えたよ。

すべてが桁違いに洗練されているのは当たり前として、何よりこの二人の文章にはキレとコクがあった。

その他大勢のビジネス書が自分の経験と思い込みを無機質に述べているだけなのに対して、この二人の文章には怨念が籠っており、そこに生命が宿っていた。

それが見事に芸術性に昇華されていた。

いずれにしても、これはまともに勝負したら確実に俺は負ける。



◆運はいつか誰にでも確実に巡ってくる◆

中井:…でもそれが逆にチャンスだと大学生の千田さんは思ったんでしょうね?


千田:そう。まず俺が圧倒的にこの二人に勝っているのは若さだった。

若さというのは神が授けた宿命だから揺るぎないアドバンテージだ。

俺にはたっぷり時間が与えられているわけだから、準備できるわけ。準備というのはこの二人と俺を確実に差別化すること。

だからこの二人とはプロフィールや生き様をとことんずらさなければならなかった。中途半端にずらすんじゃなくて、文字通り100人いたら100人がゼロ秒で判別できるくらい過激なほどに“とことん”ね。

俺が二人を追いかけて広告代理店や総合商社を目指してもそれは二番煎じや三番煎じ。それではとても勝てないし、何よりもそんなのは生き恥だ。

現に「じゃあ、俺も!」と、この二人そっくりの経歴をアピールして同じコースを辿ろうとする人たちが続出したんだけど、見事に全員消えたよ。もちろん出身校だけグレードアップして東大から広告代理店や総合商社というのも全部ダメ。みんなで潰し合ってみんな勝手に消えてくれた。そんなの市場はもうすっかり飽きちゃった(笑)

ビジネスで大切なのはお客様が飽きる前に自分が飽きることなのにその初歩がわかっていない。改めてこれは楽勝できそうだなって確信したよ。

いろいろ考えた挙句、予備校講師になってカリスマとなり、そこから出版デビューを果たそうと決めた。実際に大手予備校の講師として内定をもらったんだよ。


中井:えー!!予備校講師ですか?


千田:今でこそ予備校講師は社会的に認められ始めているけど、当時は「ハァ?」みたいに周囲から露骨にバカにされたね(笑)周囲の同級生たちは上級公務員や大企業に続々と内定を決めてもう完全に勝ち組気取り。


中井:ちなみに何の教科の先生として内定をもらったんですか?


千田:英語と数学。


中井:うわ~、千田さんに教わってみたいです!


千田:予備校講師として参考書を執筆してタイミングを見ながら徐々にビジネス書にシフトしていこうとかなり真剣に考えていた。


中井:あくまでも千田さんにとって目的は執筆だったということですね。


千田:そうだよ。

もう完全にカリスマ講師になって著者になるイメージが出来上がっていた。


中井:そんな千田さんがどうして損害保険会社に入社を変更してしまったのでしょう?


千田:正直に言うね。予備校の内定式で出された寿司がカピカピで余りにも不味過ぎたのと、同期の連中がショボ過ぎて失望し途中退室してそのまま辞退してしまったんだ。理屈ではなく生理的に無理だと本能が騒いでいた。「少なくとも、今この瞬間はここは俺のいるべき場所ではない」と。今振り返ってもあれは酷い挫折だった。

今ではその予備校はさらなる発展を遂げているし申し訳ない気持ちで一杯だけど、あの時は本当に耐えられなかったんだ。それで他にいくつか内定をもらったまま放ったらかしにしておいた会社の中で損害保険会社にしたわけ。

周囲の大人たちが異口同音に「お前、保険会社だけはやめておけ。保険屋は卑屈にペコペコ頭を下げ続けなければいけない厳しい仕事なんだぞ」と説得してきたのもあって、もともと天邪鬼な自分がムクムクと出てきて怖いもの見たさも手伝い「じゃあ、ここにしよう」と。

誰も賛成してくれなかったから「きっと、ここには何かあるんじゃないかな」って。迷った場合は凡人たちが反対する側を選んでおけば間違いないと、いろんな本にも書いてあったし。

実際には直接お客様にペコペコするのは社員ではなくて、保険会社と代理店契約を結んだ販売店の仕事だった。俺たち社員は「販売店は鵜飼いの“鵜”。君たちは“鵜飼い”」と洗脳される長期研修を終え、入社初日から配属先で何十もの販売店を管理する役割を与えられるんだけどね。あくまでも組織上ではだけど、新入社員の分際で自分の親世代の販売店主たちの上司だよ。都会のど真ん中の綺麗なオフィスで一般職の事務員たちも毛並みのいい美人揃い。給料もいいし、特に何か成果を出したわけでもないのに年に3回、しかも毎回月給の何倍もボーナスが振り込まれる。すっかり大企業病に感染してしまい、かなりまったりさせてもらった。

「予備校講師からビジネス書の著者」というコースからはドロップアウトしたけれど、これなら広告代理店とも総合商社とも被らないからセーフ!と自分を言い聞かせてね(笑)


中井:私も就活で保険会社をいくつか回ったんですが、どこも駅前一等地に摩天楼のようなオフィスビルを持つ由緒正しき大企業という印象でした。東北大学から入社しても違和感がありません。少なくとも予備校講師になるほどのギャップはありませんね。安定したブランドもあって転職もプロフィール的にも潰しが利きそうです。


千田:そうかもね。正直に告白するとそこまで深くは考えてはいなかったんだけど、この保険会社に入っておいたからこそ次のコンサル会社に転職できたのかもしれないし、処女作も保険業界に向けての本を出せたわけだ。まあ、あくまでもこれは結果論だけどね。


中井:振り返るとすべてが繋がっているんですね。

コンサル会社に転職したのもやっぱり執筆のためですか?


千田:お、さすがだね。

恵まれた生活にもすっかり慣れてしまい退屈してきた頃に、ある日保険会社で同じ部署だった慶應出身のミーハーな後輩が「千田さん、将来独立するならコンサル会社はどうですか?」と教えてくれたのがきっかけ。

最初はコンサル会社と聞いても何をしている会社かわからなかったし全然ピンとこなかった。

後輩には「コンサル会社って、探偵事務所のことか?」と聞いて呆れ返られたくらい。

だけど調べていくうちにそこそこ名の知れたコンサル会社の社員たちは本をたくさん出しているとわかってきた。

それも社長や重役だけでなく、ペーペーの平社員でもバンバン本を出していた。

「よっしゃ、これや!」と思ったね。


中井:コンサル会社から内定をもらったら、もう出版は約束されたようなものだと。


千田:そうそう。売上目標を一度も達成したことのないような平のコンサルタントが営業の本を出していたくらいだから、これなら楽々出版できるだろうと(笑)


中井:夢が向こうから千田さんに向かってやってきたという感じですね。


千田:その通りなんだ。処女作の奥付は2007年10月になっているけれど、本当はもっと早く出せた。もちろん一日でも早く出したかった。長年の夢だったからね。でも焦らなかったよ。周囲のコンサルタントを見ていて、自分ならこのまま生きてさえいれば絶対に本を出せるという確信があったし、処女作は絶対にいいスタートを切りたかったから。


中井:出版社も戦略的に選ばれたんですか?


千田:当時のチームには後に総合商社に高い年棒で転職を果たした飛び切り優秀なメンバーがいて、彼がロジカルに考えて「ここがいい」と推してくれた出版社と俺が「ここかな?」と直感した出版社が一致したからほぼ即決だった。

社内ではコネがあって本を随分出しやすい出版社もあったけど、どこか違和感があって、いやちょっと待てよと。何かに挑戦しようとしたら最初の一歩目は極力判断を誤るべきではない。最初の一歩目がしっかりとしていないと次に繋がりにくいからね。俺が処女作を出した出版社からは、当時の創業者以外は誰も出していなかったよ。

チームメンバーの協力もあり処女作は何度も増刷がかかった。

おかげさまで保険業界では見事にベストセラーになった。


中井:本当に素晴らしいですよね!それを皮切りにどんどん出版されて今の千田さんがあるというわけですね。千田さんの話を聞いていてつくづく思うのは、成功というのは運じゃないということです。「こんな人なら成功して当たり前だな」って思います。


千田:正確には運のおかげも確実にあるんだけど、さすがに運だけじゃお話にならないだろうね。気づくかどうかは別として運はいつか誰にでも確実に巡ってくるけれど、それを掴み、さらに成功し続けるためには圧倒的な実力があってこそだから。


中井:ビジネス書作家としての千田琢哉は成功すべくして成功したと改めて確信しました。こんな人に私が勝てるはずがありません。私は私の土俵で千田琢哉を目指します。



成功するかどうかは、すでに決まっている。








◆合わせて読みたい千田本


◆千田琢哉(せんだ・たくや) 著者ページ ➡ 137冊出版(2017年2月現在)

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◆千田琢哉(せんだ・たくや) プロフィール

文筆家。
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。
東北大学教育学部教育学科卒。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。
コンサルティング会社では多くの業種業界におけるプロジェクトリーダーとして
戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。
のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話に
よって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を
自らのミッションとして執筆活動を行っている。
現在までの著書累計は250万部を超える(2017年2月現在)。




◆中井ゆり(なかい・ゆり) プロフィール

「真夜中の雑談」運営部 インタビュアー。


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