【第12回】自己啓発書を読む人を揶揄する風潮をどう思いますか?

緑川夕子(以下、緑川):緑川です。

この日をどんなに楽しみにしていたことか…今回もどうぞよろしくお願いします。


千田琢哉(以下、千田):よろしく。


緑川:早速本題に入らせていただきます。

今回は千田本もジャンルに含まれることがある「自己啓発書」についてお話しさせてください。

「我が国の自己啓発市場はすでに数千億円となり、もうすぐ1兆円に届くのではないか」と何かで読みました。

これほどまでの勢力となった市場に対する嫉妬もあるのでしょうが、「くだらない」「そんな本を読んでいる人間は駄目だ」「お金と時間の無駄」と揶揄する声もあります。

中には自分が自己啓発書の著者でありながら「自己啓発書なんて…」と言う人もいます。

それについて千田さんはどう思いますか?


千田:正直、特に何も思わないなぁ。

他人はどうでもいいというか・・・


緑川:あれ!?…ひょっとしてこれで終了でしょうか。これでは私、帰って中井に叱られます!


千田:じゃ、何かそれらしいこと言っておこうか。

中井さんが喜びそうなこと(笑)


緑川:あ、あのヘルプ!ヘルプ!お願いします(泣)


千田自己啓発市場というのは日本に限らず世界的に見ても大きいよ。

アメリカなんて桁違いじゃないかな。

成功したい人がウジャウジャいるし、チャンスがあれば彼らは遠慮なく飛びついてくるから。

日本人みたいに本当は成功したいのに自分に嘘をついてまで批判して誤魔化さない。

みんな正直に「お金持ちになりたい!」「アメリカンドリームを叶えたい!」と、堂々と叫ぶからね。

俺の本の翻訳版は中国、韓国、台湾、ベトナムなどで40冊以上出ているんだけど、増刷がかかっているのもあるし、あちこちからファンレター、ファンメールも届くよ。

SNSでも千田本情報が世界中で飛び交っている。

緑川:…つまり日本人の自己啓発書に対する批判は羨望の裏返しであると?


千田:羨望というより、どちらかと言えば恥ずかしいからなんじゃないかな。


緑川:は、恥ずかしい、ですか?恥ずかしいと人は批判するんでしょうか?


千田:だってさ、「成功したい!」とか「お金持ちになりたい!」という本心を周囲に知られるのは恥ずかしいと感じる日本人は多いだろう?

せっかく気を遣って「和を以て貴しとなす」という世界で生きているのに、自分だけ村社会から飛び出すのは恥ずかしくて勇気が要ると思うよ。

それこそ日本村では村八分にされちゃうかも(笑)


緑川:確かに学校でもサラリーマン社会でもどこかそういう空気が根強く残っていますね。

つまり村八分にされたくないから必死に出る杭にならないようにして、周囲と一緒に批判しているということですね。


千田:概して批判というのはベクトルが下から上に向かうものだし、ベースに恐怖心がある。

新橋で酔っぱらっているサラリーマンが時の総理大臣の批判をすることはあるだろうけど、その逆はない。

本当は自分も欲しくて堪らないのに、恥ずかしくて「欲しい」とは口に出して言えない。

だから「欲しい」と口に出してそれに向かって努力して獲得した人を見ると、どうしても許せない。

自分の勇気や行動力のなさ、そして弱さを認めることになるからね。


緑川:それ、痛いほどよくわかります。

本当は誰だって成功したいし、お金も欲しいはずですからね。


千田:あるいは代表的なステレオタイプの批判に「成功本を読んで成功するのは著者だけ」というのがあるよね。


緑川:あ、それ、私もこれまでに耳にタコができるほど聞いてきました(笑)

正直、いい加減ウンザリします。


千田成功本の著者はその本を書く前にすでに成功しているわけだから、今さら印税で成功しようなんて思っていないよ。

普通に考えてもし10万部売れても1千万円、奇跡的に100万部売れても1億円。

今の時代この程度でお金持ちとは言わないし、成功者とも呼べないだろう?


緑川:確かにそれはそうですよね。

お金持ちや成功者から見ればその程度のお金はお小遣い程度かもしれませんね。


千田:同業として俺も成功本に目を通すことがあるけど、本当によく書けていると思うよ。

「こんなに成功ノウハウを公開してもらっているのに、みんな何やっているの?」って、不思議で仕方がない(笑)

「再現性がない」「真似できない」と言われる本もあるけど、そんな完璧をたかが千数百円のものに求めてはいけない。

たったひと言でも心に響く言葉があって、それを糧に生きていくことができれば御の字。

そういう積み重ねが何十や何百と全身の細胞に染み渡ると、ようやく人生に変化が表れる。


緑川:それ、何かわかるなぁ~。

小説とか読んでいても、ストーリー以上に「この一文が好き」「あのセリフが忘れられない」ということが多いんですよね。


千田:究極、すべての本は自己啓発書なんだよ。

小説家というのは「俺はこう思う」「自分はこうしてきたからこう考える」とは自分で言えないから、フィクションで隠しながらこっそり自己主張しているわけ。

フィクションであるストーリーは自分の主張を披露するためのでっち上げに過ぎない。

村上春樹さんの『風の歌を聴け』という処女作があるんだけど、この作品はきっと冒頭文「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」のためだけにストーリーを創ったんだよ。


緑川:なるほど。それは奥が深いですね。

だから昔の文豪の書いた小説の名言集なんかが人気でベストセラーになるんですね。


千田小説に限らず歌や映画なんかも歌詞やセリフが忘れられないのは、それがやっぱり自己啓発になっているからだと思うよ。

あと哲学書はすべてその時代に生きる人々にとっては純度100%の自己啓発書だったはずだよ。

俺は学生時代に自己啓発書の何倍も小説や哲学書を貪り読んできたけど、今から思えばあれらすべては自己啓発だったよ。

この世の真理とは何か、人はいかに生きるべきか…これらを必死になって考え続けるわけだから。


緑川:そう言えば私も昔ヘーゲルやニーチェを読みかけたこともありましたが、自己啓発書を読む感覚とまさに同じでしたね。

…というより今気づいたんですが、千田本って哲学書に似ていますよね。

哲学者の言葉からの引用もありますし、千田さんの文体がどこか哲学っぽいです。


千田:もの凄く端折って言うと、哲学というのは知的格闘技なんだよ。

その時代の天才が「こうだ!」と主張した画期的な考えを、次の時代の天才が木っ端微塵に破壊したり、より偉大な知恵で包み込んだりする。

どんなに絶対で反論の余地がないと思われた叡智も、必ず超えられる瞬間が訪れる。

ひたすらその繰り返し。

弁証法を否定することに成功した本人も、別の誰かにアウフヘーベンされてしまう。

これって、自己啓発書の世界に似ているよね。


緑川:確かに!

新しい考え方が次々と世に発表されて、否定されたり付加されたりしながら進化していくところが同じです。


千田:そう考えると自己啓発書は軽く見られるような存在ではないことに気づかされるはず。

軽く読まれるのは大歓迎だけど、少なくとも軽く見られる存在ではない。

ちゃんとした統計データもあるんだけど、東大合格率でしのぎを削っている超一流進学校には学校の勉強とは別に読書好きな生徒の比率が高い。

しかもそれが歴史書とか小説だけではなく、自己啓発書をはじめとした人生訓も含めて幅広く教養を身につける姿勢が見られるという調査結果が出た。

要は受験勉強onlyではなくて、人生の予習を中高生のうちに終わらせてしまうということだね。

もし自己啓発書の著者で自己啓発書を軽く見る人がいたとすれば、その人は自家撞着に陥っていることになる。

自分で自己啓発書を執筆しておきながら、自分のやっていることを否定しているわけだからね。

チヤホヤされたい、愛される疑似体験をしたい、お金を稼ぎたい…という気持ちで仕方なくギリギリの経歴を引っ提げて書いているけど、心の内奥では自分を好きになれないから結局本来愛されるべき人から愛されない。

本当はそういう人こそ自己啓発書を読んで謙虚に勉強しないと。

コンプレックスを撒き散らして悪臭を放つ痛々しいオッサンやオバサンと同じになってしまう。


緑川:なるほど~。それはまったくもってその通りですね。

作家に限らず、自分の仕事に誇りを持っていない人に私はお金を払いたくないのはもちろん、近づきたくもありません。

運が悪くなりそうですし。


千田:あと市場が繁盛しているということは、それだけ競争率も高くなっているわけだよね。

つまり…


緑川:著者の数も多くなっているから質の高い本の数も増えているということですね。


千田:そういうことなんだ。

これは作家の世界だけではないけど、その分野でそこそこいい仕事をするのはプロを名乗っている人たちの中でもせいぜい20%くらい。

これが一流のプロとなればたいてい5%程度しかいない。

だけど参加者の数が増えれば20%や5%の中身である数も増える。

つまりその気になれば学び放題というわけだ。


緑川:私たちって、とても恵まれた時代に日本で生きているっていうことですよね!


千田:そうなんだ。

たとえ笑われようが自己啓発書を数十冊、数百冊きちんと読み込んで試し続けてきた人と、それを揶揄して何もしなかった人とでは人生が雲泥の差になるよ。

実際に揶揄する人たちの歩んでいる人生を見ればそれは一目瞭然だろ?

自己啓発書に限らず、旧石器時代から人類には「挑戦し続ける主人公と、それを揶揄し続けて生涯を終える卑しい顔した傍観者」しか存在しなかったんだから。

これだけは断言してもいいけど、全国の書店で陳列される商業出版というのは、出版社にとって国産自動車1台分の投資だからいい加減な本は絶対に出せない。

編集者が著者にふさわしいと考えたその分野のプロを口説き、出版社の企画会議に通り、様々な本作りのプロが関わってようやく1冊の本が世に出る。

どんなにハズレと酷評される本でもそういう競争率を潜り抜けているから、必ず学ぶべきことがあるはずなんだ。

少なくとも俺はこれまでそうやってすべての本と接してきたし、これからもそうあり続けたい。

まあ余計な雑音なんて気にしないで、ジャンジャン本を読んで勉強すればいいんだよ。

周囲の雑音が気になるということは、要は夢中になれるものがなくて暇な証拠。

人生で大切なことは誰かを嘲笑うことではなくて、自分が幸せを感じて笑うことだからね。


緑川:今日も千田さんに元気をいただきました!

私も雑音が気にならなくなるように、大好きなことに夢中になれる人生を歩みます。

森羅万象は、自己啓発。



◆合わせて読みたい千田本


◆千田琢哉(せんだ・たくや) 著者ページ→156冊出版(2018年6月現在)

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◆千田琢哉(せんだ・たくや) プロフィール

文筆家。
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。
東北大学教育学部教育学科卒。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。
コンサルティング会社では多くの業種業界におけるプロジェクトリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。
のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を自らのミッションとして執筆活動を行っている。
現在までの著書累計は280万部を超える(2018年6月現在)。


◆緑川夕子(みどりかわ・ゆうこ) プロフィール

「真夜中の雑談」運営部 スタッフ。



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