第4回 千田さんは、一代で上場企業を築くような経営者に憧れたことはありますか?
◆この人生は一回だから第一志望のことをやる◆
中井ゆり(以下、中井):これは以前からぜひ一度聞いてみたかったんですが、千田さんは起業家に憧れたことってありますか?一代で上場企業を築くような人っていますよね。
私の中では千田さんはあっちの道でも成功できるイメージがあります。
千田琢哉(以下、千田):ふーん。どうして?
中井:これまでに何人かの起業家たちとお話させてもらう機会があったんですが、千田さんもその人たちと同じ匂いを感じるからです。
千田:まあ男としてカッコいいとは思うし、心のどこかに憧れもある。もちろん立派だと認める。
だけど実際に「じゃあ、やりますか?」と迫られたら、優先順位としては二番目以降になる。
人生が二回生きられると確実にわかっていれば、前半は文筆家として生きて後半は起業家として生きようと考えるかもしれないけど、今この人生は一回だから第一志望のことをやる。
起業家として一代で上場企業を築くのが第一志望だったら、リタイアしたあとに文筆家として生きる道もあると思うけど俺の場合は優先順位が逆だからね。
普通は功成り名を遂げた人がリタイアしたあとにようやくできるかもしれない選ばれし者だけが許されたご褒美を、俺の場合はすでに若くしてやらせてもらっている。自分で自分に嫉妬するくらい超ラッキーだと思ってる(笑)毎日宝くじに当選しているみたい。
これ以上の幸せはないし、毎日が大フィーバーの人生だよ。
中井:コンサル時代に様々な経営者の方たちと対話されてきて、こっち(起業家)の世界もいいなと思ったことはありませんか?
千田:不思議なことにそれがほとんどないんだよ。それどころか経営者たちと一緒に仕事をすればするほどに、「これは割に合わない」と思った。
会社経営というのはどんなに好きで起業しても、必ず次から次へと問題が発生する。特に起業して初期の頃は問題が多発し、本業どころではなくなってしまうことも珍しいことではない。
本当は好きなことをやるためだとか高尚な理念を実現させるために起業したのに、クレームの処理に追われたり資金繰りに行き詰まって東奔西走したりしているうちに廃業なんてこともよくある話だよ。
おまけに社員たちは雇われている分際で「給料が安い」「うちの会社はダメだ」と好き放題に言ってくる。
せっかく起業してもちっぽけでしがない下請業者や単なる販売代理店のままだと、取引先の大企業の新入社員にも米つきバッタのように頭を下げ続けなければならない。
零細企業や中小企業の分際で虚勢を張って恥ずかしげもなく“マウンティング”をかましてくる無学無教養な社長もいるけど、実際には大企業の新入社員より組織上は完全に下。ベンツ乗ろうがポルシェ乗ろうが所詮下流は下流。
仕事をもらわなければ生きていけないのだから、これは当たり前だ。
表現の違いはあるけれど、「100のうち99は辛い。だからこそ、1に幸せを感じる」というのが会社経営の本質だと思うよ。
それを生き甲斐だと感じられる人が起業に向いているのであって、俺にはとてもそんなエネルギーもコンプレックスもない。だったら最初からやらない。勝ち目がないもの。
「100のうち100に幸せを感じたい」というのが俺の本音なんだ。
中井:千田さんがおっしゃると、説得力がありますね。
私がいつも千田さんに感じるのは本物の男性ホルモンです。本物の男性ホルモンとは、毛深いとかマッチョという見せかけのものではありません。もっと深い部分で太陽のような生命力を感じるんですよね。
天性の決断力と勇気、そして稀に感じる女性以上の繊細さ。よく千田さんがおっしゃっている相矛盾するものを同時に含んでいる状態です。私が何人かお会いした起業家に感じたのもきっとそれなんです。
千田:ちなみにその状態を“アンビバレント”と呼ぶんだよ。
アンビバレントな状態は「一体どっちなの?」と感じさせるから、白黒ハッキリせずグレーゾーンになる。グレーゾーンをあえて白黒ハッキリさせないでグレーゾーンのままにしておくと、そこに人とお金が集まってくるというわけだ。
人とお金が集まってくるということは、グレーゾーンには運気が宿るということだ。この先スーパーコンピューターが進化してこれらのカラクリはあっさりと解明されるだろうけど。
白黒ハッキリさせたがるのは人間の業であり、グレーゾーンをグレーゾーンとして受容するのは神の業なんだ。だから文字通りグレーゾーンというのは神秘的。
一代で数兆円企業を築き上げるような偉大な経営者たちは、たいてい大胆かつ繊細というアンビバレントな人ばかりだよ。
凡人から見たらこれを“変わり者”と呼ぶ(笑)
凡人には一生かかっても理解なんてできないんだから、それは仕方がない。
経営の世界のみならず、文筆の世界や芸術の世界、そして…スポーツの世界でも繊細さは不可欠だからね。
中井:私の浅い質問に対してまさかここまで深い答えがもらえるとは思いませんでした。
今、話を聞いていてふと頭を過ったんですが、たとえば大きな組織の顧問や社外取締役なら起業の初期の煩わしさを感じずに自分を活かせるということはありませんか?
千田:おっと、これはまた世間を一気に敵に回しかねない発言だなー。
中井:はい!いつも千田さんにすべての批判を受けてもらっています(笑)
千田:結論から言っちゃうと、俺にはメチャクチャ向いているけど心から幸せを感じられない。
顧問や社外取締役というのは、経営コンサルタントの仕事に酷似している。実際に俺は独立してから次々と声のかかった組織の顧問を務めてきた。今だから正直に告白するけど、毎月1回たった3時間や半日顔を出すだけでとんでもないお金をもらっていたこともある。従業員が知ったら翌日からストを起こされるんじゃないかというくらいね。医者とか弁護士って偉いなって思うよ。時給1万とか2万程度で朝から晩まで働いて。
でも俺のアドバイスがきっかけになって俺に支払ってくれている金額の10倍の利益が出たら、それは安いと経営者たちは考えるわけだ。これが人に使われる側のサラリーマンと違い、経営者感覚というヤツね。
経営コンサルタントという仕事は俺にとっては天職だったから、一瞬で答えがわかる。「コイツをクビにして、社長をこの人にして、組織をこうすればいい」というのは、わざわざ3ヶ月もかけてプロジェクトを組まなくても半日でわかるから。「だったらいっそのこと、俺にCEOよりもっと上の役割をやらせてくれよ」って心の中で悪魔が叫ぶわけ。もう少しストレートに表現すると、「このショボイ役割はいい加減、もう飽きた」ということになる。
きっと口には出さなくても組織の看板に頼らなくても生きていける、水準以上の経営コンサルタントなら全員心の中では思っていることだよ。才能のある連中にとっては本当に楽な仕事だよ。こんなことはお金をもらっている社長の前では決して口には出せないけど(笑)
というわけで2012年末までにすべての顧問先に頭を下げて退任させてもらった。
中井:経営コンサルタントが千田さんの天職というのは超納得です。
私がこのビジネスを開始する前に千田さんからアドバイスされたことは、全部その通りになっています。否、むしろそれ以上の成果が常に出ています。
また半年後にようやく千田さんのおっしゃっていた意味がわかりかけて、夜中にいろいろ考えている間に勝手に涙が溢れてくることもあります。
まるでパズルを次々と解くように「こうすると結果はこうなる」とか、まるで操り人形のように「この人は次にこう動く」というのがすべて論理的根拠に基づいて的中させるので鳥肌が立ちます。千田さんはよく世の中の仕組みはすべて「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じだとおっしゃいますが、ようやく最近そのことに薄っすらと気づかされました。
こんな能力が自分にもあれば、どんなに人生楽しいだろうといつも思います。
私も今だから正直に告白しますが、千田さんと一緒に仕事をさせてもらうまで経営コンサルタントは会社のブランドや学歴で誤魔化して暴利を貪っている集団だと思っていました。
千田:最後の部分は、そんなに外れてはいないかな(笑)あまり公にされないけど、もともと超一流の経営コンサルティング会社でも博士号持ちだけど学者崩れで使いものにならない連中なんかに職を与えるところから始まったんだよ。30年以上前だとPC9800シリーズとかいじってたオタクやニートの巣窟だったんだ。90年代後半くらいから2000年の間にそういう連中は老害として一掃されたけど。
中井:やっぱり、そうなんですか(汗)
千田:ところで最近始めた生き方が周囲で“素直な凡人”を見つけ、その人をとことん磨くこと。ネット社会になって増殖中の“プライドの高い落ちこぼれ”はお断り。
俺の本はすべてリアルに基づいたものばかりだから、自分の特性に合った内容を実行に移して習慣化すれば本当に結果が出る。
実際に独立してお金持ちになった人や世間で知られているプロたちからメールやファンレターが届くことも年々増えてきた。
だから将来は一緒に仕事をして俺よりもお金持ちになってもらえば、俺の本の内容が優れていることが証明される。
まあ俺よりもお金持ちになったら、たまにはご馳走してくれてもいいけどね(笑)
中井:千田さんがいつも私におっしゃっていることですね。
「早く俺よりお金持ちになってご馳走して」って、少なくとも100回は言われましたよ(笑)
千田:そう?俺ってヒモ体質かな。
中井:そうですよ~(爆笑)
幸せを感じないことは、しない。
◆合わせて読みたい千田本
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文筆家。
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。
東北大学教育学部教育学科卒。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。
コンサルティング会社では多くの業種業界におけるプロジェクトリーダーとして
戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。
のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話に
よって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を
自らのミッションとして執筆活動を行っている。
現在までの著書累計は250万部を超える(2017年3月現在)。
◆中井ゆり(なかい・ゆり) プロフィール
「真夜中の雑談」運営部 インタビュアー
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