第9回 千田さんは、これから出版業界はどうなると考えますか?
◆リアル書店は全国主要450店舗+αに収束される◆
中井ゆり(以下、中井):今回は千田さんの関わっておられる出版業界についてお聞きしたいと思います。
私自身も音声ダウンロードサービスをやっていて、間接的に出版業界と関わっています。
すでにオーディオブックも社会的に認知されてきましたし、真夜中の雑談はオーディオブックに近い存在です。
ぜひ出版業界のこれからについて教えていただけませんか?
千田琢哉(以下、千田):何からいく?一口に出版業界と言っても、リアル書店、電子書籍、出版社...といろいろあるけど。とりあえず、この順に話そうか?
中井:は、はい!欲張りですがぜひ全部お願いします!
千田:リアル書店は全国主要450店舗+αに収束されると思うよ。
中井:あの…私、勉強不足ですいません。今、日本に書店はどのくらいあるのでしょうか?
千田:概算で1万店強としておこうか。正確には13,000あるかな、というところ。
中井:え!?ということは9割以上が消えるということですか?
千田:そっちから考えるよりも、自分の故郷である都道府県を思い出してみるほうがイメージしやすいよ。
中井さんの故郷には「あそこの書店に行けば、ほぼ確実に欲しい本が売っているだろう」と信頼できる大規模な書店はいくつくらいあるかな?
中井:きっと10店もないですねぇ~。一生懸命思い出してもせいぜい5店くらいですね。
千田:じゃあ、それに都道府県数を掛けたらどうなるかな?概算でいいから計算してごらん。
中井:47都道府県×5店だから…えっと…235店です。
千田:お、正解!やるじゃん。まあざっくり約50×5=250としようか。東京、横浜、大阪、名古屋、札幌、博多などの主要都市になると、さすがに5店ということはないだろうね。
東京で+100、大都会レベルの横浜と大阪と名古屋で+50、札幌、博多、仙台、広島などの百万都市を合わせて+50とすれば、合計+200だから概算で450店舗くらいになるでしょ?
中井:そうやってイメージすると、とってもわかりやすいですね!
つまり「あそこの書店に行けば、欲しい本が売っているだろう」と思える規模未満の書店だと、消えてしまうということなのでしょうか?
千田:そういうこと。
現実には赤字でもダラダラと経営したり、本当はとっくに倒産しているのに認めなかったりする頑固書店もあるだろうから、時間はかかるとは思うけど実質的には450店舗しか要らない。要らないなら消えるべき。踏ん張ると迷惑だから。これが自然の摂理。
「あの書店にはないかも」と疑う規模の書店にわざわざ行って「ありゃりゃ、やっぱりなかったトホホ...」と思うよりは、ネット書店で注文して翌日確実に手に入るほうがいいでしょ?
中井:確かにそうですね。どうしても今すぐ欲しい本があれば、信頼できる大型書店に行きます。
あとネット書店で買うほうが誰かに立ち読みされていなくて、綺麗な本なんですよ。実はコレ、とても大切だと思います。
450店舗というのは鮮明にイメージできました。
…ところで千田さん、“+α”というのは何でしょうか?とっても気になります。
千田:規模は小さいけど、何か強烈な個性や魅力がある書店は残る。
“小粒ピリリ系書店”とでも呼ぼうか。
たとえば「今こんなことで悩んでいる」と書店員に相談すると、さっと店内からおススメの本を持ってきて目の前に並べてくれるとか。
中井:あぁ~、テレビで見たことがあります!
確かにあんな書店であればちょっと行ってみようかなと思いますね。
千田:あるいは超マニアックな本しか置いていない書店とかも根強いファンに支えられて残る可能性は高いだろうね。
それこそ新幹線や飛行機でわざわざその書店に買いにやって来るとかさ。
中井:なるほどー、そういう書店が+αなんですね。
リアル書店に関しては千田さんのおっしゃる通り、450店舗+αに収束していくということがよく理解できました。善悪の問題ではなく、それが自然の摂理であることも。
えっと…次は…
千田:電子書籍だね。
電子書籍に関しては現時点では“田舎の進学校”状態だね。
中井:い、田舎の進学校…ですか?
千田:そう。ちょっとその気になれば誰でも入れるんだけどピンからキリまで玉石混淆…というか過半数が石コロ。
中井:メチャクチャわかりやすいです(笑)
千田:ピンは紙の本でちゃんとベストセラーを出していて、ついでに電子書籍も販売している作家だね。ピンの作家は紙の本でも印税がドカンと入り、電子書籍でも印税がそこそこ入るわけ。
キリは紙の本をどこの出版社からも出してもらえないから、自分で電子書籍を販売している自称作家だね。昔で言えばちょっとお金持ってる中小企業のオヤジが自費出版で自伝をこしらえて厚顔無恥に配ってたんだけど、電子書籍ではほぼ無料で参入できるようになったから貧乏タレでもOK。キリの作家は印税がゼロか実質赤字、あるいは入ったとしてもごく僅かというのが現状。
中井:最近増えましたね、電子書籍only作家。
千田:中井さんは買ったことある?
中井:99%はピンの作家の電子書籍しか買いませんが、無料かそれに近いものならキリの作家のも試しに購入して読んでみたことがあります。
千田:お、偉いじゃない。それで、どうだった?
中井:読者の立場から言わせてもらうと、キリの作家の電子書籍は無料でも高いです。すべてとは言いませんが、小学生の作文かと思えるほど読むに堪えないものもありました。
千田:まあこれも時代の流れで、インターネットと同じく誰でも情報発信できるようになったというわけ。
電池式時計の登場で機械式時計の会社の経営を逼迫させたように、電子書籍の抬頭で紙の本がダメージを受けるのは間違いない。
だけど機械式時計が富裕層を巻き込んで起死回生のターンアラウンドを果たしたように、これから紙の本は贅沢品になって相対的に地位は上がる。
「あの人は紙の本を出している上流の作家だよ」「あの人は紙の本をたくさん持っているよ、本にお金かけてるね」というようにね。
電子書籍はその引き立て役として大衆を巻き込み、クラス分けができると思う。
「松:固定ファンがいて紙の本を中心に出していた上流作家の電子書籍(=地位も収入も高い)」
「竹:固定ファンが少しいるけど紙の本は能力的に出せなかった下流作家の電子書籍(=地位も収入も低い)」
「梅:固定ファンがおらず何か間違って出しちゃった小学生の作文的電子書籍(=地位も収入もゼロorマイナス)」
比率としては松:1%、竹:19%、梅:80%みたいなイメージ。
ネット書店は、永遠に松に届くことはない“プライドの高い落ちこぼれ”である竹や梅の作家を傷つけないよう、そっと巧みに松竹梅を区別することになるだろうね。これもまた自然の摂理。
これは俺の心の叫びじゃなくて、そうでないとお客様である読者が困るから。
中井:...確かに言われてみればそうかもしれませんね。松竹梅をパッと見てわかりやすくしてくれないと、購入する側が一番困ります。
本に限らないですけど、こういうのって松のふりした竹や梅が絶対に激増しますから。
◆斜陽業界こそチャンス◆
千田:さて、最後は出版社だったね。
中井:はい、出版社はこれからどうなるのでしょうか?
よく潰れていると聞きますが…
千田:書店数が年々減るように、出版社数も年々減っている。
現在日本にある出版社は3,000社強。この10年間で約2割の出版社が倒産した。
中井:そんな業界で千田さんは成功しているって、まさに奇跡の存在ですよね。
千田:そう思ってくれる人が多いから、逆にこういう斜陽業界こそチャンスなんだよ。
出版に限らず、テレビなどのマスコミは完全な斜陽業界だからとても勝ちやすいと思うよ。
官僚や外資系コンサルの頂点レベルにたまに見られるような飛び切り優秀な人材なんてどこを探してもいないし、何をやってもダメだとみんな諦めモードだから。これは超大手出版社の社員にインタビューを受けた際の話なんだけど、俺と意気投合した彼は「マスコミは算数ができない人が多いんですよ…」とポロリと本音を漏らしていた。彼は開成高校から一橋入学組。極めて優秀だけど頂点レベルではないからこそこの業界を選んだ。
確かに80%以上が私立文系の巣窟だけあって概してみんな数字に弱い。厳密には名門中高一貫校出身者は私立文系でも北大以上京大未満で数字に強い人たちもたくさんいるけどあくまでもそれは全体の中では例外中の例外。私立文系のほとんどは専願組であり、彼らはせっせと暗記に励んだ努力家ではあるけれども根本的に冴えない人が多いし、抜群にキレる人も少ない。単なる知識格差でマウンティングをかましてくる元いじめられっ子らしき人は多いけど(笑)
マーケティングとはウン千万や億単位の金を身内にばら撒く出来レースだと思い込んでいる毛並の悪いオッサンが幅を利かせていたり、でっち上げベストセラーでふんぞり返っている小人物もいたり。
逆にマスコミでは算数ができる優秀な人材がいても組織で生きる限り、嫉妬に狂った私立文系軍団に虐め殺されてしまう。過労に見せかけて実質は醜い嫉妬による虐めなんだよ。
競技参加者が腑抜けか寝ぼけてくれていると、ガンガン新しいことにチャレンジして攻めていける。ちょっと本気でやるだけで、すぐに突出できちゃうからお得だよ。面白いほど努力が報われる。だからこんな俺でも何とかやっていける。まるで小学生のドッヂボール大会に、運動部の大学生が参加している状態。誰にとってもそんな“べらぼうに勝ちやすい土俵”がきっとあるはず。そこで勝負しなきゃ。誰でも日々刻々と死に近づいていくんだから寿命を大切に使って欲しいな。
中井:なるほど!斜陽業界ほど努力が報われやすいから、逆にチャンスなんですね。
またまた、今回も千田さんに勇気と元気をもらいました。
斜陽業界は競技参加者の偏差値が低いから、
努力が報われやすい。
◆合わせて読みたい千田本
◆千田琢哉(せんだ・たくや) 著者ページ ➡ 145冊出版(2017年8月現在)
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◆千田琢哉(せんだ・たくや) プロフィール
文筆家。
愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。
東北大学教育学部教育学科卒。
日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。
コンサルティング会社では多くの業種業界におけるプロジェクトリーダーとして
戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。
のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話に
よって得た事実とそこで培った知恵を活かし、“タブーへの挑戦で、次代を創る”を
自らのミッションとして執筆活動を行っている。
現在までの著書累計は260万部を超える(2017年8月現在)。
◆中井ゆり(なかい・ゆり) プロフィール
「真夜中の雑談」運営部 インタビュアー。
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